KDDIは2016年春、㈱カカクコムとの間に合弁会社を設立し、新規ビジネスに乗り出した。領域は、ライフデザインの観点からも欠くことのできない「飲食」だ。両社のアセットやノウハウを活用し、飲食業界に付加価値の高いサービスを届けていく。新事業始動の陰には、熱意あふれる中途入社者の活躍とパートナーとの絆があった。

本部長以下、一丸となる。

「皆の力を結集し、事業を成功させよう!」。2016年4月1日、金融・コマース推進本部を率いる勝木本部長からの激励に、メンバーは改めて気を引き締めた。この日は、カカクコムとの合弁会社「㈱オープンリザーブ」の設立日。いよいよ『ヨヤクノート』を軸とした新しい事業への挑戦が本格的に始まるのだ。
『ヨヤクノート』とは、グルメサイト「食べログ」を運営するカカクコムが、飲食店に提供している予約台帳アプリのこと。これを利用する飲食店は、「食べログ」や電話・メールなどで受け付けた予約情報をタブレット上で確認・更新することや、顧客情報を一括管理することができる。そして、KDDIはこのタブレット端末を飲食店に提供し、カカクコムと共同で、『ヨヤクノート』の拡販などを推進することになっている。KDDIはこれまでも、「au WALLET Market」などで一部の飲食店と関わりを持ってきたが、今回の事業ではサービスの適用範囲が格段に広くなる。
このプロジェクトでKDDI側のハブとなり、戦略立案から会社設立に至るまでの業務を担ってきたのが、足代裕希とリーダーの吉村幸浩だ。前職およびKDDIで、O2Oの豊富な経験を持つ二人は、約4ヵ月前にプロジェクトにアサインされて以降、本部長以下、各部の部長を巻き込んで、一気に案件を進めてきた。
足代は言う。「戦略立案などで壁に突き当たった時は、本部長や部長と本気・本音で議論を交わし続けました」。役職の垣根を超えて忌憚なく話し合う――。KDDIの社風を象徴する姿と言えよう。

「運命共同体」の覚悟を持って。

この案件の大きな特徴は、合弁会社の設立を目指したことにある。パートナー企業と新会社を立ち上げるには、業務提携をする時以上に、相手方と深くコミットすることが欠かせない。ゆえに、「座組を成立させる過程では、お互いが相手に何を求めているのか、役割分担をどうするか、カカクコム様と腹を割って話し合いました」と吉村は力を込める。そして先方の求めに応えるために、社内の関係部署およびグループ会社と協議を重ね、KDDIとしての体制を迅速に整えていったのだ。
また、吉村・足代は、『ヨヤクノート』の商品企画にも積極的に関与する姿勢を見せている。足代によれば「『ヨヤクノート』はカカクコム様の持ち物なので、本来は自分たちが口を挟む必要はありません。しかし、事業をともに行っていく以上は、一蓮托生。例えば、あるセグメントの飲食店に『ヨヤクノート』を展開するには、どういう機能やストーリーが要るか、私たちからも多くの提案をさせていただきました」。
実は両名、カカクコムとの合弁会社設立に先立って同社の社員に同行し、帯同営業も行っている。飲食店での利用状況や反応などを直に確認しなければ、先方に役立つ提言ができない、と考えたためである。「『ヨヤクノート』のサービス・機能の勉強会にカカクコム様の社員の方と一緒に参加し、また帯同営業していくことで、新しい事業にともに歩み出していく一体感を感じました」と楽し気に語る二人。彼らの提案が『ヨヤクノート』事業の改善に活かされたのは、現場理解に基づく実効性があるものだったからに他ならない。

“超”が付くスピード感。

カカクコムとの絆が日を追うごとに深まっていた2016年の2月、3月。足代は契約の締結や会社登記といった、合弁会社の設立に係る準備にも取り組んでいる。これらの業務は彼にとってKDDIで初めての経験だったが、社内から専門知識を有する人材の協力を得て、作業は矢のように進んでいった。
会社設立までには、社内的にもさまざまな手続きを踏まなければならないが、スピード感が重視されたこのプロジェクトでは、要所、要所で特例措置が講じられることとなり、経営陣や関係部署の対応も実に素早いものだった。「検討を開始してから、両社の強みを活かすスキームを協議し、経営陣の承認を得て、実際に合弁会社を設立するまで、ものすごいスピードで進んでいきました 」と足代は驚く。
一方の吉村も、「人手が足りないと言えば、すぐに人事に掛け合って、手当てをしてくれるなど、本部長も部長も、我々が動きやすいよう全面的に支援してくれました。そして、“超”が付くスピード感で一気に進めよう、というスタンスに、ライフデザイン企業への飛躍を目指す経営層の意気込みを感じました」と振り返る。

両社の強みがシナジーを生んだ時…

『ヨヤクノート』は現在、導入済みの飲食店から、「予約に関する業務負担が軽減され、顧客管理システムも高度化できた」と評価されている。だが、足代はここで立ち止まるつもりはない。「今後は、KDDIのアセットである“au WALLET”の決済サービスやポイントサービスも、この座組に採り入れていきたいと思います」。それに続けて吉村も、「カカクコム様は戦略的なパートナーで、本音で話し合える大切な仲間です。お互いに協力し、両社の強みを活かし切ったインパクトのあるサービス展開を目指していきたい。自分たちが世の中で一番良いものを提供できると信じて、突き進むのみですね」と強い意欲を覗かせた。
パートナー企業と共同でライフデザイン戦略を具現化していく、この事業。ICTの先進技術やネットワークを有するKDDIと、月間約7,470万人(2016年3月実績)に利用されている「食べログ」のカカクコムが連携し、シナジーを生み出せば、飲食の世界をイノベートするような価値のあるサービスを創出できるに違いない。